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KUMIKO EBI

滋賀県情報

2019.06.12

 

地域のおいしさを味わう

「食を通じたクオリティ・オブ・ライフ」

 

平均寿命・健康寿命ともにトップクラスの仲間入りを果たした滋賀県。

これまで、オリンピック強化選手や高校球児など多数の栄養サポートに従事し、

近年は「地域のおいしさ」を取り入れた活動も展開する、立命館大学スポーツ健康科学部の

海老久美子教授に、滋賀県民の健康を支える食生活のこれからについてお話を伺いました。

―海老教授の取り組みについて教えてください。

 

「スポーツ・健康」の視点から、地域の食の可能性を探索し創造することが研究テーマの一つで、地域の食文化と栄養学を融合した新しい食品やメニューの開発などに取り組んでいます。その中で注目しているのが「おいしさ」。毎日食べるものが私たちの身体をつくりますが、一朝一夕にはいきません。大切なのは健康な食生活を習慣化することで、そのためには「おいしさ」は欠かせません。ただ、ここで言う「おいしさ」とは、単なる味覚の事ではなく「心身共に満足した味」のこと。その人の環境や食歴、情報、心理状態等、様々な要因が影響すると考えられます。

 

滋賀県産の大豆粉から作ったアスリートスイーツ「SOY LETES(ソイリーツ)」。ここ滋賀で販売中。

 

―心身共に満足した味を得るためには何が必要でしょう。

 

「食の価値観」について、一度じっくり考えてみるとよいかもしれません。例えば、お酒を飲むことが好きな人が、健康のためにお酒をやめるか、おいしく飲むための食べ方をして運動もするか、価値をおくことの優先順位は人それぞれです。しかし、ひとつ言えることは、運動習慣は食生活に影響します。適度な運動によって、身体の五感は敏感になり、味覚が研ぎ澄まされます。運動後の水を甘く感じるという経験、ありますよね?滋賀県は、湖魚、お米、お茶、ジビエ、大豆など、栄養バランスの優れた食材を、琵琶湖と同じように広い空の下で、キャンプやスポーツ等の活動と共に楽しむことができるので、「特別なおいしさ」を堪能できる、特別な地域だと思います。そうした地域の特性を活かしながら、それぞれの食の価値観にあった生活を送ることが、心身共に満足した味を得ることにつながります。

 

アスリート食に関する多数の著書。

 

―食の価値観を明確にすることが食生活を豊かにするのですね。

 

そうですね。興味深いのは、「一物全体(人が食物の命を無駄なくいただくことで、必要な栄養素を効率よく取るという仏教の考え)」に通ずる食材や食べ方があることです。その好例が、大豆とスジエビを丸ごと炊いて作る「えび豆」で、特にたんぱく質とカルシウムをたっぷり摂取できるので、運動前後の補給食としてもお勧めの一品です。ただ従来の「えび豆」は甘辛く煮るので、塩分と糖分が気になるとの声も聞きます。そこで滋賀県産の青大豆をえびのゆで汁も活用した出汁と鷹の爪で、旨味たっぷりの見た目も鮮やかなひたし豆「ab豆」として、塩分と糖分を気にせず食べられる一品にアレンジしました。このように、長く培われた地域の食文化を、今ここに暮らす人々のニーズに合わせた形に創造することができれば、それはとても意味のある楽しい事だと思います。

 

 

大学の調理室では実践的な栄養指導ができる人材育成をめざす。

 

滋賀の食材を使った「滋賀めし」を監修。塩分を増やさずに沢山のお野菜を美味しく摂取できる。

 

■ PROFILE

海老 久美子(えび くみこ)さん

立命館大学スポーツ健康科学部 教授

神奈川県出身。博士(栄養)、管理栄養士、公認スポーツ栄養士。

多数のアスリートたちを栄養サポートしてきた。

2010年より現職に就任。大学で教鞭をとる傍ら、地域食材を使った食品や新メニューの開発など幅広く活躍する。

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撮影・山崎 純敬 / SHIGAgrapher

ライター・大山 真季