ここ滋賀ブログBLOG

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TOYOHIRO NISHIMURA

滋賀県情報

2021.05.15

愛され続けて70 年、湖北のまちのパン屋さん

 

長浜市木之本町の北國街道沿いに創業70 年のパン屋さんがあります。

“ここ滋賀”でも人気の「サラダパン」を作る<つるやパン>です。

コッペパンにマヨネーズであえた“たくあん”を挟んだサラダパン。

その誕生秘話や人気の秘密について伺いました。

 

―“ここ滋賀”でも人気の「サラダパン」ですが、コッペパンの具材にたくあんという独創性に驚く人が多いと思います。どのようにして生まれたのでしょうか。


サラダパンが生まれたのは、今から約60年前のことです。1951年創業の<つるやパン>では当時、子供向けのパンを作って売っていたのですが、あるとき、男性のお客様から甘くないパンが欲しいという要望があり、祖母がマヨネーズとキャベツをあえてコッペパンに挟んだのがサラダパンの始まりです。ところが、製造の翌日にはキャベツから水分が出て売り物にならず、なんとかしたいと考えた祖母が、キャベツの代わりにたくあんを刻んで入れたのが現在のサラダパンです。その背景には、大量に余ってしまったサラダパンのパッケージがもったいないという事情もあったようです。

 

 

出来たてのサラダパン。パンのふんわり食感を保つため袋に入れている。

 

―人気の秘密はなんでしょうか。


祖母は、「なんでやろなぁ。でも、“どうしてもこれが良い”と言ってくれる人がいたから作ってこられた」と言います。昔はたくあんも自家製で、味も今ほど安定していなかったと思いますが、地元のお客様はサラダパンのおいしさを知ってくれていたんですね。長い年月の間には、パンの口溶けを少しずつ良くするなどしてきました。また、近年はたくあんの古漬けにこだわっています。なかには古漬けが苦手な人もいますが、サラダパンが好きで食べ続けてくれた地元の人たちのためにも、この味は守っていきたいです。それに、好き嫌いのあるパンというのも面白いじゃないですか?このような尖った商品を作り続けられるのは、うちの強みだと思います。

 

風情のある北國街道。

 

―地元のファンを大切にされているのですね。


そうですね。十数年前に全国放送のテレビ番組で取り上げていただいてからは、県外からも多くの方にお越しいただくようになりました。しかし、「パンはどこで仕入れているんですか」と聞かれたことがあり、それから「まちのパン屋でありたい」という思いが強くなりました。ぜひ作りたてのサラダパンを食べに来てほしいです。

 

―お店にはサラダパンのほかにも、さまざまな商品がありますね。


地元で一番の人気は、丸い食パンにマヨネーズと魚肉ハムをはさんだ「サンドウィッチ」です。こちらもサラダパンとほぼ同時期に生まれたロングセラーです。今は食パンといえば四角いものが主流ですが、昔は割と丸いものが多かったんですよ。丸い食パンは短時間で均一に火が通るので耳まで柔らかいのが特徴で、子どもやお年寄りも喜んで食べてくれます。ほかにも、ソフトフランスパンにバタークリームとカスタードクリームを合わせて充填した「ミルクボール」や、魚肉ソーセージをパン生地で包んで揚げた「ランチパン」など、常時20~30種類の商品を作っています。

 

 

「人の手で丁寧に作られていることを知ってほしい」と西村さん。

 

―今後実現したいことはありますか。


できれば車で移動販売をしたいですね。うちは滋賀の北の外れにあるので、車で回ることでつるやパンが滋賀にあることを実感してもらえると思います。そして、あの時あの場所で食べたからおいしかったね、と皆さんの思い出のパン屋になれれば嬉しいです。

 

■ PROFILE

 

西村 豊弘(にしむら とよひろ)さん

有限会社つるや 専務取締役

東京でサラリーマンをしていたが、父の体調不良を機に2006年家業に入る。全国的に知られるようになってからも本店は地元の
子どもやお年寄りたちで賑わう。つるやパンを食べて育った子どもたちが、大人になっても住み続けられる町にしたいと考える。

 

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撮影・山崎 純敬 / SHIGAgrapher

ライター・大山 真季 / ノギラボ