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AKIHITO TANIMURA

滋賀県情報

2022.01.15

郷土玩具・近江だるま
いとおしいその存在を、いつまでも

 

東近江市能登川地域には、近江だるまと呼ばれる郷土玩具が伝わります。

独特の表情が印象的な手作りの工芸品で、地元住民が保存と継承に取り組んでいます。

近江だるま保存会の代表谷村昭仁さんに、地域の宝として歴史をつないでいく思いを伺いました。

 

―ユーモラスな表情ですね!地元ではどのように親しまれてきたのですか?


なんともいえないほほえましさがあるでしょう。八の字眉の「男だるま」、上品な笑みを浮かべる「女だるま」、子どもの「姫だるま」をはじめとして、ハチマキ姿などもあります。
京都で古美術商を営まれていた寺井大門さんが、地元能登川で大正末期に制作を始めたもので、縁起物として各地のお土産屋さんに並んだり、戦時中は慰問品にもなったりしたそうです。

その後息子の清二さんが後を継いだものの、昭和58年に交通事故に遭われ、以後途絶えてしまいました。

私が近江だるまを知ったのは断絶後、能登川の昔話が集められた本のなかでした。

興味をもって寺井家を尋ね、残されていただるまをご家族を通じて見せていただくことができたのです。さらにその魅力に引き寄せられ、後世に残したいとの思いを強めました。

男だるまと女だるま。サイズも5cm~30cmほどと様々にある。

 


―それが保存会結成につながったのだとか。


製法をご存知だった清二さんの奥さまに、作り方を教えていただきたいとお願いしたんです。

めんどうですよ」とご心配いただきながらも、材料や資料をいただき、なんとか形だけは整えられるようになりました。
このだるまは張り子で、木型に和紙を貼り重ねて、最後に顔の表情を絵付けします。和紙のみで作られる張り子は珍しいそうです。この木型が残っていたこと、なにより奥さまが製法をご存知だったことがあったからこそ、指南していただけたのです。
その後平成9年に保存会を結成、興味をもってくれた地域の方々が集まり、現在は6人のメンバーで活動を続けています。

 

古びた風合いが歴史を伝える。 ユニークな表情が今に継承されてきた。

 


保存と継承のためにどのような取り組みをされているのでしょう。


地域の博物館などでの近江だるまづくり体験講座を行うほか、地元の小学校では、郷土学習の一環として行われる授業のなかで学んでもらっています

歴史を伝え、さらに実際にだるま作りもします。近江だるま作りでいちばんの難所は表情を描くところ。

不思議なことに“自分の顔に似る”ものなんです。これまでにのべ1937人の児童がこの授業を受けたことになります。子どもたちのほとんどは、授業で初めて知る存在。きっと親御さんもご存知ないでしょう。

ただ「がんばってだるまを作ったなあ」という経験と思い出が、伝承につながるはずだとコツコツ続けてきました。

青や黄色などの色付きやハチマキ姿タイプのだるまも愛嬌たっぷり。

 


―郷土玩具が地域に果たす役割をどのようにお考えですか。


近江だるまのことを問い合わせてくれるのは、たいていが県外の愛好家。

最近では大手雑貨店などで取り扱いされるようにもなって、他にはない独特の表情がじわじわ注目をされているのかなと思います。

注文があれば、保存会のメンバーで手分けてして制作している状況です。
希少な玩具が残されていることは、地域の誇りであり、財産でもあります。

一人でも多くの人が存在を知り、大切に思う気持ちをもってくださることを望んでいます。

 

 

谷村 昭仁(たにむら あきひと)さん

 

近江だるま保存会会長。地元に伝わる郷土玩具に魅せられ、製
法を習得。

保存会として地域の子どもたちへの出前授業などを約 20年続けている。

自らが営むJR能登川駅前のカナリヤ楽器店でもだるまを購入できる。

74歳。

 

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撮影・山崎 純敬 / SHIGAgrapher

執筆・矢島 絢子