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DAISUKE ISHIZU

滋賀県情報

2021.06.20

「地の味」を伝えたい

有機米農家 石津大輔さんが目指すこと

 

耳を澄ますと、かすかに湧き水の音を感じる生水の郷 針江(しょうずのさと はりえ)。

「食と農を明日につなぐ」をモットーに、有機農業に取り組んできた米農家

< 針江のんきぃふぁーむ> の石津大輔さんに、生き物と共生する魅力や、

オーガニックへのこだわり、米農家としての思いを伺いました。

 

―田んぼの脇を流れる水が透き通っていて美しいですね。


そうですね。ここ針江地区は100 ヶ所以上から水が 湧いているので、一年を通して水路にこのようにきれ いな水が流れています。毎年、田植えの時期になる と、この水路をつたってフナやナマズが琵琶湖から 遡上してきます。田んぼの水は水温が他よりも高く、 魚の餌となるプランクトンが豊富なので、きっと魚た ちは匂いを嗅ぎつけて来るのでしょう。そして、雨で 田んぼの水がちょろちょろと溢れると、その水に乗っ てピョンと田んぼに入り産卵するんです。特にナマズ は鼻が利くのか、雨が降る前にたくさん寄ってきま す。僕たち人間のように天気予報を見なくても、ナマ ズは雨が降ることがわかるんですね。

 

 

石津さんが手塩に掛けて育てたお米「いのちの壱」。

 

―このような自然環境への負荷が少ない農業に取り組んできた石津さんですが、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。


現在、耕作面積の8 割以上にあたる約17.5haで、農 薬や化学肥料を使用せず主にお米を育てており、そ のうち15haで有機 JAS 認証を取得しています。もち ろん除草剤は使わないので、栽培期間中は雑草との 闘いです。また、これからの農業は持続可能であるこ とが最低限の条件という考えから、肥料もできるだけ 地域由来の米ぬかなどを用いています。今年からは 農業機械の燃料の一部に天ぷら油をリサイクルした バイオディーゼルを使うようにしました。環境にやさしいと言われる有機農法でさえも燃料などのエネルギー消費が課題としてあるなかで、自然に感謝する気持ちを忘れず、歴史や知恵を受け継いできた「農」に現代の「農業」を近づけるのが理想です。

 

田んぼの水路のせせらぎは、琵琶湖と繋がりたくさんの命を育む。

 

―とてもストイックに米づくりをされているのですね。おいしさへのこだわりはいかがでしょうか。


一番大切にしているのは「地の味」です。それという のも、有名ブランドのお米だからおいしいというの は、既成概念によるところが多いと感じるからです。 いつどの肥料を入れると甘いお米になるなどのノウハ ウも、まるで田んぼに味付けをしているような違和感 があって。もちろん、僕たちも肥料は使いますが、地 域由来の有機物を土に還元することで、お米が健全 に育つようにあくまで“守り”をする感覚ですね。僕た ち米農家が地の味をお伝えできてこそ、お客様はお 米を食べることに楽しみを見いだせると思いますし、 僕自身も米農家という生業を誇りにできるので、そう したところを大切にしていきたいです。

 

石津さんの釜コレクション。釜ごとに異なる炊き上がりを楽しむのが石津さん流。

―読者の方に伝えたいことはありますか?


先程の地の味にも通じますが、ぜひ、お米の多様性 を楽しんでいただきたいです。うちでは、多様性を味 わっていただくために、コシヒカリやミルキークイーン などのほかにも、古代米や滋賀旭 27号などの希少品 種を育てています。古代米は薬膳にもよく使われるお 米で、うちではおはぎやお餅にもしています。白米と 混ぜて炊くとご飯の彩りが良く、もちもちとした食感 になります。滋賀旭は肥料なしでもよく育つ有機農法 に適したお米で、甘味が少なくさっぱりとしていると ころが個人的に好きです。海外にも目を向ければ、お 米の食べ方はライスサラダやパエリア、リゾットなど 色々あるので、そうした調理方法もぜひ参考にしてみ てください。

 

 

■ PROFILE

 

石津 大輔(いしづ だいすけ)さん

針江のんきぃふぁーむ 代表

一度は大阪でファッションの道に進んだが、人間らしい生き方の答えは生まれ故郷にあるとUターンし、実家の田んぼを受け継ぐ。先代が始めた有機農法の耕作面積を増やし、2005年針江地域の仲間と共に日本初のGMO Free Zone(遺伝子組み換え作物拒否地域)を宣言。有機JAS検査員も務める。

 

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撮影・山崎 純敬 / SHIGAgrapher

ライター・大山 真季 / ノギラボ