2022年9月7日(水)公開
平安初期、唐(現在の中国)から茶の種を持ち帰った最澄(さいちょう)が滋賀県の比叡山麓にまいたのが、日本における茶葉栽培の始まりと言われています。以降、県内各地で茶が栽培されるように。なかでも、野洲川(やすがわ)沿いのなだらかな丘陵地を有する点で地の利に恵まれていた土山町一帯は、県内有数の茶の産地になりました。
「お茶の栽培に適しているのは昼夜の寒暖差が大きい土地ですが、土山はそれに加えて冬はしっかり寒く、春は徐々に暖かくなります。そのおかげで芽がゆっくり育ち、香りも旨みも濃い肉厚の茶葉になります。私たちはその旨みをさらに深め、かつ渋みを抑えるため、摘み取り前に茶葉に日差しを遮る覆いをかけて育てる “かぶせ茶”を主に生産してきました」。(竹田さん)
かぶせ茶の名産地が土山一晩ほうじを誕生させた背景には危機感がありました。近年、家庭内での日本茶消費量が減少。加えて生産者の高齢化による後継者不足などの不安要素を少しでも軽減したいと、4年前に茶農家と茶匠がプロジェクトを立ち上げたのです。
「土山では昔から茶農家と茶匠が連携し、美味しいお茶を送り出してきました。これは他の産地には見られない特色です。今回もそのやり取りのなかで、“少し萎(しお)れさせた茶葉で作る微発酵茶が面白いのでは”との意見が出て、取組を始めました。茶葉の水分を抜いてしんなりさせる萎凋を行うと、花のような甘い香りが漂います。その特性を生かしているのが土山一晩ほうじです」。(竹田さん)
※萎凋とは…摘み取った茶葉に風を当て、葉をしんなり(発酵)させて香りを出す作業
若い世代や外国人にも好まれるほうじ茶の専門店も営み、今までに数多くのほうじ茶を開発してきた茶匠の吉永健治さん。萎凋と焙煎技術のマッチングで、しっかりした味わいを持つ土山茶の魅力をもっと引き出したいと、日々研究を重ねています。
「ほうじ茶は、茶葉の選び方、焙煎の仕方で風味が一変します。焙煎する時間もまちまちで、30秒しか焙じない時もあれば、40分かける時もあります。だからこそ面白いし、難しいんです」。(吉永さん)
全国に十数人しかいない茶師拾段位を保有。目利きのプロである吉永さんは、土山一晩ほうじの規格作りにも携わりました。
「土山一晩ほうじと名乗れてロゴが使えるのは、①12時間以上萎凋させた香り高い茶葉を使用、②土山茶業協会員が栽培・製造した茶葉を使用、③滋賀県茶商業協同組合員及び土山の生産者が焙煎したほうじ茶、この3つをクリアしたお茶だけです」。(吉永さん)
ここ滋賀では、9月15日(木)~17日(土)に土山一晩ほうじの試飲販売会を開催します。読者の皆様、ご来館の皆様にメッセージをいただきました。
「竹田さんをはじめ、生産者の方々が萎凋させて花のような香りを引き出した茶葉を私たちのような焙煎職人が焙じると、その香りがもっと華やかになり、奥行きが出ます。“香る”ほうじ茶と呼んでいるのはそのためです。生産者の個性と茶匠の個性の掛け合わせで土山一晩ほうじは幅広い商品ができました。スイーツから中国料理まで相手を選ばないので、食事中のお茶としても楽しんでいただけます。ぜひお試しください」。(吉永さん)
2024年07月01日(月)公開 愛くるしく、お餅のような顔とルックスで、日本を代表する人気キャラクターとなった「ひこにゃん」。誕生から18年が経ち、ひこに…
2023年7月14日(金)公開 琵琶湖の東に位置する彦根市(ひこねし)と愛荘町(あいしょうちょう)、豊郷町(とよさとちょう)、甲良町(こうらちょう…
2024年06月04日(火)公開 日本における茶葉栽培の歴史は、延暦24年(805年)頃に唐(現在の中国)から帰国した最澄が、日吉大社(滋賀県大津市)の一隅…