2023年2月21日(火)公開
滋賀県では、東近江地域などでイチゴの栽培が盛んに行われており、新規就農者を中心に栽培する農家は全県的に増える傾向にあります。しかし栽培されているのは「章姫(あきひめ)」や「紅ほっぺ」といった全国で広く栽培されている品種がほとんどでした。
「農家の方から“滋賀のオリジナルのイチゴがあれば、もっとPRしやすい”という声をいただき、イチゴ栽培をもっと盛り上げていこうと開発に着手しました」。(同センター栽培研究部野菜係 花田惇史(はなだ あつし)氏)
2016年に開発がスタート。同センターの職員が試行錯誤を重ね、研究のバトンをつないで、2022年にようやく、滋賀県内一部スーパーでのテスト販売にこぎつけました。
新しいイチゴをつくるには、どんなイチゴを目指すのか、その特徴を定めて、それに合う母親と父親の品種を決めなくてはなりません。“滋賀県での栽培方法に適していて、量を採るには”など、さまざまな条件に合うイチゴを模索しました。
滋賀県でのイチゴ栽培は、ハウス内に設置した腰の高さほどの台に栽培場所を置く「少量土壌培地耕」が主流。暖房であたためたり、電灯で照らしたりすることのない、「無加温・無電照」であることも特徴です。この条件をそのまま活かすことができるようにと選ばれたのが、以前から滋賀県で多く栽培されていた「章姫」。そして、かけ合わせる品種には、果実が硬めで傷みにくく、甘みと酸味のバランスが良い「かおり野」が選ばれました。
「章姫は、少量土壌培地耕に適していて、収穫量も多いのですが、気温が高くなる3月以降に、果実がやわらかくなりすぎたり、味が薄くなったりする弱点がありました。これを補うために、かおり野をかけ合わせました」。(花田氏)
「章姫」と「かおり野」を交配してたくさんの新品種の子株をつくり、実ったイチゴの味や香り、扱いやすさなどチェックした上で優秀な株を選抜。これを幾度となく繰り返しました。機械での測定のほか、職員が1日100~200個のイチゴを食味でチェックすることもありました。
作りやすく、おいしい品種を見定めるために、毎日食べ比べをしたり、実際に植えてちゃんと実がとれるかを選定する過程が一番苦労しましたが、最終的に、1600系統から一つに絞り、新品種「滋賀SB2号」が誕生。名前は公募で、7600件を超えるネーミングの中から「みおしずく」に決定しました。
「イチゴの形と食べた時のみずみずしさ、そして“水”から琵琶湖・滋賀を連想させる名前ということで『みおしずく』という名前が選ばれました。また滋賀県ではブランドのシンボルとなる、高級感あるデザインのロゴデザインも作りました」。(成相氏)
2023年、いよいよ本格的な栽培がスタート。今のところ、70軒ほどの農家が栽培に取り組む予定です。現在栽培中の「みおしずく」は、ハウスの中で濃い緑の葉を生い茂らせ、ツルにはたくさんの実をつけています。
「甘さも酸味もしっかりあって、イチゴの濃い味を感じていただけると思います。特徴的なのが食感と香りです。食べた瞬間、ふわっとフローラルな香りが広がります。そしてみずみずしく、果実の肉質もしっかりしていますよ」。(花田氏)
「生産者が栽培しやすい技術を開発することはもちろんですし、色、糖度、硬度、果汁の多さなど、『みおしずく』がほかの品種とどう違うのかを、今後、しっかりデータ化していきたいと考えています。生産量が増えたら県外でも販売して、全国に『みおしずく』という名前が広まるといいなと思います」。(花田氏)
全国の市場に流通するのは、まだもう少し先ですが、滋賀のオリジナル品種「みおしずく」に出会いに、ぜひ滋賀県へお越しください。
滋賀県 農政水産部 みらいの農業振興課
滋賀県大津市京町四丁目1番1号
TEL 077-528-3892