滋賀への移住希望者と移住先をつなぐ“仲人”

2024年3月29日(金)公開

 

滋賀県への移住を検討している人への、滋賀での仕事や住まい、地域情報、支援制度などの提供や相談に対応するために開設されたのが「しがIJU(いじゅう)相談センター」。その専属相談員としてさまざまな相談にきめ細やかに対応、移住実現までのサポートを行う池田成穂子(いけだ・なほこ)さんに、センターの役割や今までの事例などについて伺いました。

 

「ふるさと回帰支援センター(有楽町)」内にある「しがIJU(いじゅう)相談センター」。アンケートの回答内容などを参考に、コミュニケーションを取りながら、ベストな移住を共に探っていく。

「しがIJU相談センター」の開設は平成29年(2017年)。44都道府県と1政令指定都市の専属相談員が常駐している「ふるさと回帰支援センター」内にブースを構えています。移住に向けたアドバイスを行うのはもちろん、ヒントが見つかるセミナーなども開催しています。

 

池田さんは長浜(ながはま)市出身。進学を機に故郷を離れ、卒業後は航空会社に就職しました。国際線に搭乗して世界で見聞を広めるなかで、琵琶湖の美しさや人の良さ、空気や水の美味しさ、文化や歴史の奥深さを再認識。航空会社を退職後、平成29年(2017年)7月から移住相談員を務めています。

 

「相談に来られるのは、移住先をすでに決めておられる方から、漠然と移住しようかなという程度の方までさまざまです。個別にお話を伺いながら、なぜ移住したいと思っておられるのか、どんな環境や仕事を望んでおられるのかなどを聞き取ります。いわばカウンセラーでしょうか。コロナ禍においては、仕事のことはさておいても人が少なくて伸び伸び暮らせる郊外に移住したいと考える人が多かったのですが、状況が落ち着いてきた昨今は、移住先と仕事をどちらも重要視する相談者が増えています」。(池田さん)

 

 

 

滋賀を希望する子育て世代が増加中

理由は利便性と災害が少ないこと

 

子育て世代が、大阪や京都への通勤に便利で、子どもたちの教育環境も整っている滋賀をめざして来られるケースも多々。資料なども取り揃えている。

移住先の希望として多く挙がるのはやはり県庁所在地。滋賀の場合も大津市を第一候補にされる方が多いです。

 

「ただ、首都圏の方は滋賀に関する情報をあまり持っておられなくて、例えば、関ヶ原のイメージが強いのか、冬は雪に閉ざされていると思っておられる方もしばしば。雪が降ると言ってもワンシーズンに3回ぐらいで、翌日にはとけてしまうレベルですと説明するとびっくりされます。中には、琵琶湖と滋賀県がなかなか結びつかない方もいらっしゃいます。」(池田さん)

 

一方で、滋賀県に移住することを決めて来所されるケースも。そういう方たちはデータを徹底的に調べたうえで、三井寺(みいでら)の近くに住みたいなど、希望が具体的な傾向です。

 

「かつては退職者世帯の相談が多かったのですが、ここ数年は子育て世代の移住希望も増えています。理由としては、子育てがしやすいから。実際、私も帰郷した際、どの市でも町でも比較的子どもがたくさんいるという実感を抱いています。また、災害が少ないことも人気のポイントです」。(池田さん)

 

京都や大阪だけでなく、東海地方や北陸地方など、どこに行くにも交通の便が良い土地柄であることも滋賀の利点です。

 

「滋賀は日本の真ん中ですからね。リモートワークやワーケーションにも適した環境が整っています。また、滋賀はコンビニが 近くに1軒も無いような地域が実は少ないんです。だから、自動車免許を返納してクルマのない生活をしたいと願われる中高年世帯も暮らしやすい。駅近に住めばクルマ無しでも快適に過ごせます」。(池田さん)

 

移住者へのアフターフォローも池田さんの大事な仕事のひとつです。

 

「メールなどでその後いかがですかと状況をお伺いするほか、すでに移住した人同士のつながりをつくる移住者交流会を各地で年に2回程度開いています」。(池田さん)

 

 

 

実際に足を運び、滋賀を肌で感じて

住むイメージを持ってもらうことが大事

 

夫婦で相談に来られる場合も多いが、互いの意見が食い違うことも珍しくない。そんな場合も丁寧に意向を聞きながらアドバイスを続ける。

相談に来られる方、実際に移住された方も順調に増えていて、手応えを感じている池田さんですが、相談員を始めた当初は滋賀の魅力をアピールしすぎるあまり、かえって相手に響かないケースもありました。

 

「私がどんなに言葉を尽くしても、ご本人が移住先での暮らしをイメージされ、住んでみたいと思っていただかなければ移住は成功しません。そのことがわかってからは、とにかく一度足を運んでくださいと話しています。観光でも良いけれども、体験プランやセミナーに参加できればなお良いので、そのタイミングを見計らいます。地元の人に声を掛ける、スーパーに行く、先に移住した人の経験を聞く、そんな時間を過ごしていただくと滋賀の良さがわかってもらえると思っています。
滋賀は、京都や大阪のように突出した観光地や名所が数多くあるわけではないのですが、でも歴史や文化が今も息づいているし、あらゆるタイプのレジャーが楽しめるスポットにも事欠かない。暮らしを豊かにしてくれる場所がたくさんあるので、実際に足を運ぶと高確率でその良さがわかっていただけます。滋賀県人の素朴で奥ゆかしい人柄が伝わるのも大きなメリットです」。(池田さん)

 

カナダに住んでおられた日本人家族とメールでやり取りを重ねながら、帰国後の住まいを探した時は、運よく空き家が見つかり、さまざまな制約があったにも関わらず、移住に至ったこともありました。

 

「移住希望者と移住先がぴったりマッチして、互いがWin-Winの関係になれることが理想。そのために私がいるので、人と人をつなぐ仲人として、今後も情報を蓄積しながら移住したい方の気持ちに寄り添っていきたいと考えています。
私は米原駅に降り立つといつもリセットされるというか、ゆったりした時の流れを感じます。あと、電車から琵琶湖が見えた瞬間も格別ですね。滋賀は土壌が豊かだから野菜が甘くておいしい。どこに居てもリトリートできる“ゆったリズム”が感じられるので、ぜひその心地良さを体験してほしいと思っています」。(池田さん)

 

 

 

しがIJU相談センター
■住所 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館8階
    ふるさと回帰支援センター内
■連絡先 090-2730-4793(直通)、03-6273-4401(代表)
■受付時間 10:00~18:00
■業務日 原則として火曜日から日曜日(月曜日は定休日)
■ホームページはこちら

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