2023年7月21日(金)公開
昭和58年(1983年)に発足した「びわ湖フローティングスクール」。「琵琶湖の環境に主体的に関わる」ことを目的に、県内の小学5年生全員が昭和59年(1984年)から乗船を開始。そこから約40年、これまでにのべ約61万人が同スクールに参加しています。
「フローティングスクールの前身は、昭和42年(1967年)にスタートした総理府主催の“青年の船”。国内外の青少年の交流のために始められたもので、滋賀県では昭和44年(1969年)に2泊3日の琵琶湖航海を行いました。その後、青少年らの交流の場として、海外や沖縄への航海が実施され、ここで得た成果をもとに、滋賀県独自の取組として、昭和58年に学習船・うみのこが誕生しました」。(安江所長)
フローティングスクールの大きな特徴は、複数の学校が同時に乗船し、他校の児童と一緒に学び、集団生活を行うことです。1泊2日の学習の内容を紹介します。
1日目は、出港後に開校式が行われます。初めて顔を合わせる他校の友だちと同じ班になり、子どもたちは期待と不安でいっぱいです。その後、その班の友だちと共に避難訓練や琵琶湖の島の展望を行います。
どもたちお待ちかねの食事は、びっくりするほど豪華です。
「すべての食事に、滋賀県産の食材を使用しています。1日目の昼食には、滋賀県産のマスや、アユ、シジミ、夕食には近江牛のステーキを提供しています。2日目の名物「湖の子」カレーもカツは滋賀県産の豚肉です。野菜も滋賀県産の食材を多く使っています。食育という観点からも、自分たちが住む滋賀県をより知ってほしいと思います」。(安江所長)
夕食後は、“湖(うみ)の子の夕べ”という交流会が開かれます。学校紹介やボッチャ大会、サイン交換などのゲームを通して他校の友だちとも交流を深めます。
「体験学習はもちろんですが、新しい友だちを作り、集団生活の中で互いにふれあい、思いやり、協力し合うこともフローティングスクールの大切な学びです。「湖の子」の夕べをきっかけに、乗船までは顔も知らなかった者同士が仲良くなり、手紙のやりとりなど大人になるまで交流が続くこともあると聞きます」。(安江所長)
2日目は、びわ湖学習を行います。その内容は、プランクトンや魚や貝などの観察、水の透視度調査や水の汚れの回復実験など。また、船から琵琶湖の景色や琵琶湖に浮かぶ島の様子も見学します。
「琵琶湖の透視度調査は子どもたちが最も気になるということもあり、ほとんどの学校が選択されます。しかし、解決すべき環境問題は時代ごとに変わっていくため、学習の内容は、時代にマッチしたものを選択してもらえるように常に新しいものを考えています。近年は、琵琶湖の全層循環の問題について取り上げました。 “琵琶湖の深呼吸”と言われており、湖の生態系にとって大切な現象です。今年は海洋ゴミなどでも問題になっているマイクロプラスチックについても盛り込めないかと検討中です」。(安江所長)
世界でも類を見ないフローティングスクール。この活動が40年も続いてきた理由について安江所長は「全国に先駆けて滋賀県がりんを含む合成洗剤の使用を条例で禁止するきっかけとなった1970年代後半の『石けん運動』でもわかるように、身近に琵琶湖という大自然がある滋賀県民のみなさんの環境意識は非常に高いと思います。だからこそ、自然の大切さを学ぶフローティングスクールは40年もの間、継続してこられたのだと思います」と話します。
「子ども時代に自然にふれ、その雄大さや美しさ、不思議さに感動できると大人になっても自然を大切にする人になれると思います。滋賀の、琵琶湖の自然を体感して、その雄大さを目の当たりにし、感動の体験を味わってほしいですね」。(安江所長)
「びわ湖フローティングスクール」の40周年を記念する式典が令和5年8月11日(祝・金)に大津港で開催されます。
「コロナ禍では、1泊2日の航海ができず、日帰りでの体験学習でした。今年度から通常のフローティングスクールに戻り、小学5年生たちは喜んでくれていると思います。滋賀のみなさんが“ずっと残していきたい”と願ってくださっている『フローティングスクール』と『うみのこ』をこれからも大切にしていきたいと思います」。(安江所長)
滋賀県立びわ湖フローティングスクール
■場所 滋賀県大津市浜大津5丁目1番7号
■問合せ 077-524-8225
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