高い縫製技術で、国内外にMade in Shigaの袱紗を

2024年1月18日(木)公開

 

小さい贈り物の包みとして活用されている袱紗 (ふくさ)は、大切な品を運ぶ際に埃がついたり日焼けを防ぐために生まれた風呂敷状の布から始まったと言われています。まさに、日本らしい思いやりや心づかいの象徴です。そんな袱紗の国内トップクラスのシェアを誇る「株式会社 清原(本社・守山市)」の代表取締役・清原大晶(きよはら・ひろあき)さんに、ものづくりに込めている思いを伺いました。

 

 

大切なものを“包む”ものという意味

社会人の嗜みとしても持っていたい袱紗 

 

創業時から数回の移転を経て、平成9年(1997年)に現在の地に本社を新築。1階が事務所やショールーム。2階で裁断や縫製を行っている。

金品をそのまま渡すのではなく、風呂敷や掛け紙など包むことによって贈る相手への思いの深さを伝える文化が日本にはあります。その思いを代弁するツールのひとつが袱紗です。呼び名や形はさまざまで、刺繍を入れたり家紋を染め抜いたものは「掛け袱紗」と呼ばれ、品物の上に掛けて使います。物を包むために用いるのは「包み袱紗」。代表的なのが、袱紗と漆盆を1つに組み合わせた「台付袱紗」と、簡便に使える二つ折りタイプの「金封袱紗」です。

 

ちりめんに美しい刺繍が施された金封袱紗

西陣織(にしじんおり)の金封袱紗

「諸説あるのですが、袱紗の語源は“ものをやわらかく包む”という意味を持つ“ふくさめる”だと言われていて、江戸時代に広まったようです。そもそも当社は、祖父の三郎(さぶろう)が風呂敷をはじめとする縫製加工業を主軸に据えて昭和43年(1968年)に創業。その10年後ぐらいから袱紗に特化するようになっていったのですが、背景には、より大事なシーンで使われる袱紗の文化に祖父や二代目の父が惹かれたからと聞いています」。(清原さん)

 

昭和50年代は、京都の和装業界で台付袱紗や金封袱紗が流行し始めたタイミングでもありました。その機運にも乗り、「株式会社 清原」はオリジナル商品を多く手掛ける会社に成長していきます。

 

「スクールカラーに染めたり校章やロゴマークのプリントなどが可能な袱紗は、現在、多くの高校や専門学校、大学の卒業記念品としても使っていただいております。美しい所作が身につけられること、社会に出る前の嗜みとして持っておきたいものであると位置付けられている点もうれしく思っています」。(清原さん)

 

 

他では縫えないものを縫う

細やかな縫製技術

 

裁断された生地を重ね合わせ、ミシンで縫い合わせる。

袱紗作りは絹やちりめんなどを大きさに合わせて裁断するところから始まります。その後、布同士を専用の糊で貼り合わせる手法もありますが、高級な商品は1点ずつ人の手で縫って仕上げます。

 

「手ざわりの良いやわらかな布が主ですから、まっすぐ縫うだけでも大変。随所でミリ単位の調整を行う縫製技術が求められます。当社では30代から80代のベテランまで、高い技術力を持つ社員・パート・内職に活躍していただいております」。(清原さん)

 

薄布を縫い合わせる際、裏面の生地を表面の生地より少し小さめに裁断。完成品を表から見た時、裏面の生地が見えないように仕立てる“控え”と呼ばれる技など、他社の追随を許さない技術の数々も受け継がれています。

 

「守山市は、子育て中のファミリーも多い土地柄です。子どもさんが小さい間は、時間の融通が利く内職さんとしてご活躍いただき、少し手が離れたらパートさんに。成長後、正社員になっていただくパターンもめずらしくありません」。(清原さん)

 

 

創業以来、Made in Shigaで

ユニークな商品展開も

 

役目を終えた後の保管用にも使われる母子手帳袱紗は、誕生祝の品としても人気。手前は扇子用の袱紗。

子育て情報誌「ママパスポートもりやま」とタイアップし誕生した「kokurumi(こくるみ)」。47都道府県各代表の最高賞である「ふるさとギフト最高賞」を獲得するヒット商品に。

ワインや日本酒のボトルがおしゃれに包める「ボトル袱紗」。巾着型化粧袱紗なども販売している。

創業以来、3代にわたって貫いているのが「Made in Shiga」のスタンス。滋賀県ならではの上質素材と高度な縫製技術で自社生産を継続。2010年(平成22年)には、新ブランド「和奏(わかな)」も誕生させました。

 

「綿に麻、そして絹。3つの天然素材の産地がすべてあるのは、国内最大の湖である琵琶湖が生む湿潤な自然環境と豊かな水資源に恵まれている滋賀県だけの特徴だと思います。ものづくりの感性も息づいている強みを生かしたくて、新ブランドを立ち上げました」。(清原さん)

 

滋賀県長浜市の伝統工芸品である「浜ちりめん」を使った伝統的な仕立ての袷袱紗、ポーチとしても使える念珠袱紗、母子手帳や診察券などがまとめて入れられるポケット付きの母子手帳袱紗などの商品を開発。地域の子育て情報誌とタイアップした、赤ちゃんを優しく包む「kokurumi」、ワインを包むためのボトル袱紗など、既成の概念にとらわれないユニークな商品も開発しています。

 

 

国内外に袱紗を広めたい

「ここ滋賀」オリジナル商品も開発

 

令和5年(2023年)に開催されたG7で各国首脳や関係者に配られたジュエリー袱紗。

令和5年(2023年)5月に広島で開催された先進7カ国首脳会議(G7)では、各国首脳にステンレス製の折り鶴が贈呈されました。その収納用ポーチとして採用されたのが「和奏」のジュエリー袱紗です。

 

「配られたのは、原爆の子のモデルになった佐々木禎子さんが残した折り鶴のレプリカです。広島県の精密メーカーが制作されたのですが、その記念品を包むためのポーチとして、日本らしさや上品さが感じられる和奏の品が選ばれたと、サミット閉幕後に詳細を知りました」。(清原さん)

 

同志社大学在学中はテニスに打ち込んでいたと話す清原さん。2児の父として、子育てにも勤しんでいる。

「ここ滋賀」オリジナル商品として、3色展開している「平安ふくさ」

話題を呼んでいるNHKの大河ドラマ「光る君へ」は、「源氏物語」の作者である紫式部の人生を描く一代記。式部は「源氏物語」の着想を石山寺で得たと伝えられています。

 

「その点に因み、平安時代の滋賀を表現した「平安ふくさ」を「ここ滋賀」オリジナル商品として制作、販売を始めました。カラーは平安時代に高貴な女性たちが身につけていた十二単の襲(かさね)の色目を参考に、刺繍も施した3色展開。ジュエリーや小物、小銭入れにも使えるサイズなので、平安時代から続く滋賀の歴史や文化に触れるきっかけにしてもらえればと思っています」。(清原さん)

 

 

株式会社 清原
■住所 滋賀県守山市古高町477-15
■連絡先 077-582-2388
■営業時間 9:00~17:30
■定休日 土日祝日
■和奏(わかな)ブランドサイトはこちら

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