2025年1月21日(火)公開
その昔、都への交通や物流の要所として栄えた街道が滋賀県内には数多く存在しました。今も県内の主要道路であり、その風情や佇まいを残す街道に注目し、ゆったりとめぐる〝滋賀の歴史旅〟をご提案します。
今回は、滋賀県の北部から北陸地域へとつながる「北国街道」をピックアップ。滋賀県土木交通部都市計画課の谷幹(たに・もとき)と安達智明(あだち・ともあき)が街道の成り立ちや見どころについてお話します。
滋賀県の北部・彦根市から長浜市を抜けて福井県へとつながる北国街道。北陸地域と中山道を結ぶ大動脈の一部です。街道の成立時期は定かではありませんが、古くより日本の交通の要衝でした。彦根市の鳥居本宿の北側で中山道と分岐して、一方は京都へ。もう一方は福井方面とそれぞれの目的地を目指します。
日本各地から都や江戸に向かう街道の一つが北国街道です。五街道のような華やかさはありませんが、重要な街道であったことは確かです。
北国街道についてお話しする上で重要なのが北国脇往還です。北国街道の木之本宿から中山道の関ヶ原宿へと通じるショートカットルートです。岐阜・名古屋方面から直接北陸へ向かう、またその反対もそうですが、この脇道があることで、分岐点である鳥居本宿まで行く労力を省くことができました。実は、政治、経済、文化的な背景から、北国街道よりもこちらの脇往還の方がより利用されていたとも。江戸時代には、北陸諸藩の参勤交代の大名行列も通ったとされます。また、茶荷物などの輸送路にも使用されていました。
鳥居本宿近くに残る旧街道。当時に近い景観を感じられる。
北国街道は、東海道や中山道のように華やかな宿場は少ないのですが、滋賀県北部の自然や気候を反映した景観や歴史資源がたくさん残っています。
滋賀県土木交通部都市計画課で調査したデータによると、北国街道や北国脇往還のように琵琶湖の北側の地方部を走る街道は、景観資源が比較的多い傾向があります。滋賀県内を走る東海道、朝鮮人街道のような市街地にある街道は、街の機能の充実により都市化が進んでいる現状があります。
前から見るとハの字の形状をした妻入勾配屋根。敷地の側面に雨水処理の溝など造らねばならず、建築物と建築物の間に空間が必要。そのため敷地に余裕のない都市部ではあまり見られない。
また、北国街道や脇往還には、当時の建物や街道の道標も残っています。特に、街道の景観に影響を与える屋根の形状にも街道ごとに特徴があり、屋根に注目して歩くのも楽しいかと思います。
都市部から離れた、雪の多い地域であった北国街道・脇往還のエリアでは「妻入勾配屋根」という、屋根が八の字のように見える造りがほとんどです。この造りでは屋根を連ねることができず、広い敷地を要します。街中に宿や拠点が密集する東海道沿いでは妻入の屋根は少ない傾向にあります。
北国街道や北国脇往還には、都市部から少し離れた街道だからこその見どころがあるように感じます。
左から滋賀県土木交通部都市計画課の谷幹(たに・もとき)と安達智明(あだち・ともあき)
北国街道や脇往還がある地域は、街と街の間に距離があり、歩いて移動するのは少し大変かもしれません。私たちがおすすめしたいのは、宿場をゆっくり歩いて自然や歴史資源を見て回る街道旅です。
北国街道と北国脇往還が交わる宿場です。現在のJR木之本駅から北側のエリアは、伝統的な和風建築がたくさん残っており、二階建ての建築物が連なる街道らしい景観と美しいスカイラインを見ることができます。
国の重要文化財である「木造地蔵菩薩立像」をまつる木之本地蔵院があるエリアは、老舗の酒蔵や醤油店など商店が並びます。現在は、空き家を利用した新しい店やコミュニティもできており、ぶらぶら歩くのにとても楽しいエリアです。
木之本地蔵院(公社)びわこビジターズビュロー
(公社)びわこビジターズビュロー
(公社)びわこビジターズビュロー
黒壁スクエアなど、多数の観光スポットが集まる長浜宿。このエリアでは華やかな見どころに混在して、当時の歴史資源が残っています。黒壁ガラス本館前には北国街道の道標が。また、長浜宿の北の入口にある郡上太神宮には、旅人の目印となった石燈籠が今も存在します。有名な滋賀の観光エリアですが、街道を目的に歩いていただくと、これまでとは違ったおもしろさがあるのではないでしょうか。
黒壁ガラス本館前の道標
北国街道の北の入口にある石灯籠
■077-528-4184
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