2023年6月7日(水)公開
滋賀県の6分の1を占める琵琶湖では、古くから漁業が盛んに行われてきました。古くから連綿と受け継がれている独自の漁法を用いて、アユやニゴロブナ、ビワマスなどの魚類、エビ類や貝類を漁獲しています。
琵琶湖全体の水揚げ量は、昭和30年の10,616トンをピークに減少。令和3年の総漁獲量は788トンで、そのうちの270トンを占めるのがコアユです。滋賀県を代表する湖の幸であることがわかります。
北村さんが生まれ育った沖島は、近江八幡市の沖合約1.5㎞に浮かぶ琵琶湖最大の島。周囲約6.8㎞、面積が約1.53k㎡あり、約230人が暮らしています。その多くが漁業に従事。約85%の世帯が沖島漁業協同組合に加入しています。
「沖島のコアユ水揚げ量は令和4年で約69トン。琵琶湖のほぼ真ん中に位置していて、湖の東西南北、どこにでも船を出しやすい立地であることから、琵琶湖における漁業の基地的な役割を果たしてきました。我が家も代々漁師をしていて、私は15歳の時に自分の船を持って以来、55年間、この仕事を続けています」。(北村さん)
沖島のコアユ漁は毎年3月ごろに始まり、8月初旬まで行われます。漁法は、“細目小糸(こまめこいと)漁”とよばれる刺し網漁。魚の通り道にカーテン状の網を張り、網の目に頭を突っ込ませる漁法です。沖島では、網に刺さったコアユを外す方法が独特。漁船に高く組まれた金属製の足場に網を引っ張り上げ、それを揺すって魚を甲板に落とします。これは沖島発祥の方法だと言われていて、作業は2人以上で行わねばならないため、沖島では多くが夫婦(めおと)船として操業しています。
「網目の大きさは、コアユの成長に合わせて変えます。破れた網の補修はもちろん、そもそも網自体も自分で作る漁師が多いんですよ」。(北村さん)
コアユ漁が行われるのは深夜です。北村さんは22~23時ごろに港を出航。朝方まで漁を続けます。帰港してから漁具の片づけなどを済ませ、朝食を食べた後、畑の手入れをして、ようやく就寝。16時ごろに起床して早めの夕食を取り、次の漁に備えます。
「コアユ漁は8月初旬ぐらいまで。夏になるとビワマス、秋から春にかけてはワカサギやホンモロコ、魚に合わせて漁具だけでなく船を出す時間もマチマチなので生活自体が変わります」。(北村さん)
「沖島漁業協同組合にはかつて150人の正組合員がいましたが、今は75名。平均年齢は70歳代で高齢化が進んでいます」。(北村さん)
琵琶湖漁業全体の課題 でもある後継者不足の解消に向けて、滋賀県と滋賀県漁連は平成29年度から3年間にわたって「後継者育成事業」を実施。研修希望者の指導を沖島でも行いました。
令和5年度には、その一環として、国が行う3年間の研修期間を終えた30歳代の青年が新米漁師として沖島で独り立ちしました。島育ちの20代青年も独り立ちを目指して研修中。琵琶湖の恵みを次世代に受け継いでいくための努力が続けられています。
沖島漁業協同組合
■住所 滋賀県近江八幡市沖島町43
■連絡先 0748-33-9511
■ホームページはこちら
沖島漁業協同組合婦人部の有志6名によって、「湖島婦貴の会」が発足したのは平成14年。島で“若煮”と呼ばれる、水あめを使わずに湖魚をあっさり炊く、沖島名産のつくだ煮を作って販売したのが始まりです。現在、メンバーは20数名にまで増加。「島を訪れてくださる方々と触れ合えたら」「ゆっくり休憩してもらえる場所があれば」「沖島の家庭の味に親しんでほしい」といった思いから、漁業や家事に忙しい日々の中で協力し合い、漁業会館1階の屋台と休憩スペースの運営を行っています。
島内の畑で育てた野菜、新鮮な湖魚を使う沖島の味を詰めた弁当や定食などが予約制で食べられるほか、コアユの若煮、エビ豆、沖島味噌などの名物も販売。外来魚のブラックバスを使う「沖島よそものコロッケ」も評判を呼んでいます。
■漁協婦人部・湖島婦貴の会
■連絡先 0748-47-8787
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