2023年6月15日(木)公開
藤原不比等(ふじわらのふひと)によって建立された奥津嶋神社(おくつしまじんじゃ)があることから、沖島は湖上交通を祈る神の島として崇められてきました。人が住むようになったのは平治の乱の後。7人の源氏落人が居住したのが始まりと伝えられています。島への交通手段は通船のみ。近江八幡市の堀切港(ほりきりこう)から約10分で到着します。
「琵琶湖に島がある?しかも住めるの?と、よく聞かれます。“海なし県の離島”とも呼ばれていますが、対岸の堀切港には島民用の駐車場があり、そこから町へは車で20分ぐらい。意外と便利なんです」。(川瀬さん)
滋賀県蒲生郡(がもうぐん)日野町に生まれ育った川瀬さんは京都の大学に進学。ソーシャルデザインやグラフィックデザインを幅広く学びました。在学中にインターンシップで沖永良部島(おきのえらぶじま)へ。その時の経験から、いつかは島で暮らしたいとの思いを持って卒業。京都にあるメキシコ料理店を運営する会社に就職し、調理師の資格を生かしてメニュー作りやテキーラの販売企画を担当していました。
「山間部で育ったので、水辺の近くで暮らすことに憧れていました。とはいえ、沖永良部島に移り住むのはハードルが高い。調べていくうちに、地元の滋賀県にも離島があるじゃないか!と、地域おこし協力隊に応募しました」。(川瀬さん)
川瀬さんの地域おこし協力隊におけるミッションはPR。自分自身もよく知らない琵琶湖の魚について広めようと、SNSを使って発信を始めました。
「メキシコ料理の知識を生かして、琵琶湖で獲れた季節折々の湖漁を使い、トルティーヤに湖魚の具材とサルサを包んで食べるタコスなどを考案。京都の出町柳駅近くにあるシェアカフェでの営業にも挑戦しました」。(川瀬さん)
その時の屋号は“琵琶湖と、タパス。”。ブラックバスフライのタコス、モロコとクリームチーズのパテのトスターダ、ビワマスのサルサソテータコスなど、その時々のタコスのプレートランチを提供。滋賀県主催の“食材フェア”では、首都圏在住のシェフに向けて、沖島の食材をアピールしました。
「淡水魚は泥臭いというイメージを持っている人が多いのですが、琵琶湖の魚はそうではない、調理の幅も広いことを知っていただけました。昨年の10月には、初の試みとなる“おきしまるしぇ”と名付けたイベントを沖島町離島振興協議会と企画。チラシの製作デザインなども行いました。島内外合わせて20の出店者が参加してくださり、沖島を楽しんでもらえる機会になりました」。(川瀬さん)
2023年2月に地域おこし協力隊の任期を終えた後、川瀬さんは沖島の漁業協同組合に就職しました。島内で暮らしながら、事務仕事と魚の加工業などを兼務。沖島と島外をつなぐパイプ役兼窓口を務めています。
いつかは滋賀にしかない仕事をしたいと考えていた川瀬さん。その想いをかなえて沖島という唯一無二の場所で日々を過ごしています。
「陸からそんなに離れているわけではないのに、ここでしか見えない景色がたくさんあります。たとえば、夕暮れ。知り合いが来た時などに、アウトドア用の椅子を抱えて夕陽を見に行きますが、ぼけーっとするだけの時間がたまらなく開放的。比良山と琵琶湖を貸し切っているような、豊かな気持ちになります」。(川瀬さん)
現在、沖島への移住者は川瀬さんを含めて5名。小説の執筆や民泊の管理、漁業などそれぞれの活動を行っています。
「島に足を運ぶからこそ見える風景や世界をぜひ知ってほしいですね」。(川瀬さん)
川瀬さんや沖島漁業協同組合のインスタグラムでは沖島の日常が垣間見られます。
■川瀬さんInstagram
■沖島漁業協同組合Instagram
沖島漁業協同組合
■住所 滋賀県近江八幡市沖島町43
■連絡先 0748-33-9511
■沖島漁業協同組合ホームページ
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