2023年5月31日(水)公開
冬季における農家の副業として高島ちぢみが織られるようになったのは、天明年間(1781〜1789年ごろ)から。次第に評判を呼び、京都や大阪に販路を拡大。地域を支える産業に発展しました。
一番の特徴は、優れた吸湿性と爽やかな着心地。高温多湿な日本の風土に適した素材として、肌着や夏の衣服などに重宝されています。
高島ちぢみには、緯糸(よこいと)の撚り(より)を平織生地などの約2倍かけます。さらに織り糸の数を少なくすることで隙間を作り、風通しの良い生地に仕上げます。
「当組合では、所属する8社の機屋さんから届く生地にシボをつけます。その工程を経ることで、生地と肌の触れる面積が一層少なくなり、特有のサラッとした着心地が生まれます」。(平山さん)
シボ加工の次は、生地に付着した繊維片、織布時に使用した糊などを取り除く作業。薬剤を使いながら、表面を滑らかにするシルケット加工、より白い生地に仕上げる加工なども行います。
この晒工程で必要なのが綺麗な水。「高島晒協業組合」では比良山系の伏流水である安曇川(あどがわ)の水を活用しています。
「湧き水で漂白すると白度が高くなります。プリントの発色を良くするためにも湧き水が欠かせません」。(平山さん)
染色や捺染(なっせん)加工の際にも大量の水が必要。だからこそ、排水する際はプランクトンなどを利用した処理を徹底的に行い、無色無臭の水に戻しています。
機械で巻き取られていく生地に顔料でプリントする捺染加工は、最大5色使いが可能。ただ、その工程における色の濃淡や柄位置の調整には細やかな見極めが求められます。
「まず、試しにプリントした生地と見本を並べて、図案が正確に重なっているか、色が依頼通りかをチェックします。職長のOKが出たらプリントを開始するのですが、常にかなりのスピードで動く布に顔料を刷り込むので、1ミリでも色柄がずれると10メートル単位の生地が台無しになってしまいます。そうならないよう、職人が常に凝視しています」。(平山さん)
かつての高島ちぢみは和服や肌着が主な用途でしたが、現在はさまざまな衣類ブランドやメーカーが注目。幅広い世代に向けたワンピースやトップス、パンツなどが製造販売されています。快適性と懐かしさ、おしゃれ感をあわせ持つ素材として、その人気は高まりつつあります。
高島ちぢみの伝統を生かした、新しい商品を生み出すべく、ベテランの職人と若手が共に作業を行っています。
「ベテラン世代から多くの事を学ばせてもらい、若い世代ならではの柔軟な発想を加味して今の暮らしに合う高島ちぢみを作っていきたいと考えています」。(平山さん)
「私は地元出身ですが、ここで働くまで高島ちぢみのことを良く知りませんでした。でもその伝統と魅力を知るにつれ、将来性を強く感じるようになっています」。(平山さん)
20~30代の職員も増えています。捺染加工を担当する黒川さんもそのひとりで、実は平山さんの同級生。平山さんから熱心に誘われ、捺染士を目指すことを決めました。
「高島の綿と長浜の絹、湖東の麻、滋賀県内には三つの生地産地があります。これは全国的に見てもめずらしい。いずれはその強みを生かした活動もできれば良いと思っています」。(平山さん)
高島晒協業組合
■住所 滋賀県高島市新旭町旭1411番地
■連絡先 0740-25-3515
■営業時間 8:00〜17:00
■ホームページはこちら
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