2024年3月14日(木)公開
鳥中の創業は1961年(昭和36年)。鶏肉専門店として、提中さんの祖父母が商いを始めました。当時は、精肉の販売を主に行なっていましたが、鶏に対するある思いから「高島とんちゃん」が誕生します。
「古くから高島地域では、卵の採卵業が盛んであったことに由来します。卵を産めなくなった鶏は廃鶏と呼ばれ、鶏舎から捨てられる存在でした。食肉用に比べると筋張っていて肉質が固いため、用途があまりなかったのです。祖父母が『廃鶏をおいしく食べられないか』と活用方法を考え、赤味噌の漬けだれをまぶした“味付けかしわ”を開発したんです」。(提中さん)
提中さんの祖父母は近隣の焼肉店を回って試作の味見を依頼。改良を重ねながら廃鶏が最もおいしく食べられる味噌だれの配合を考案しました。「これはおいしい!」と評判になり、鳥中のショーケースの一部で味付けかしわの販売を始めたそう。
「当時は、味付け肉というものがなかったそうで、人気を集めたと聞きました。また、捨てられるはずの鶏を有効活用して、安く、おいしく提供しようという、今で言うフードロスの取り組みに繋がっていたことも先見の明があったのかなぁと思います」。(提中さん)
鶏なのにとんちゃんと不思議な呼び名ですが、お客さんたちが言い出したものなのだとか。
「韓国では、味が付いた牛ホルモンのことを“とんちゃん”と言うそうで、それに味が似ているとか。高島は韓国の方が多く住まれており、そんなお客さんたちが鶏なのに“とんちゃん”と呼び出したそうです。また、福井や岐阜のご当地グルメとして“とんちゃん”という豚ホルモンの味付けがあるとも聞きます。諸説ありますが、今は“高島とんちゃん”と名乗っています」。(提中さん)
とんちゃんの要である味噌だれは、味噌、しょう油、ニンニク、トウガラシ、ごま、ごま油で作られています。配合は企業秘密ですが、「材料をミキサーで混ぜるだけで作り方もシンプルです」。
高島とんちゃん誕生当時は、廃鶏を使用していましたが、現在は、廃鶏以外にも、若鶏のモモ、ムネ、せせり、はらみなど複数の部位を仕入れています。注文が入るたびに秘伝の味噌だれを絡めて提供。
「ここ滋賀など遠方の店舗では、冷凍処理をしたものになってしまいますが、味噌の味がしっかりと入っていて、おいしいですよ。味が馴染んでいるので、野菜と炒めて食べるも良し、唐揚げにしても絶品です」。(提中さん)
定番の野菜炒めや唐揚げのほか、「玉ねぎと炒めて丼に、焼きうどんに、チーズダッカルビ風にしても最高です。寒い季節なら、深型のホットプレートに野菜と一緒に入れて鍋にするのもおすすめ。味噌だれを調味料としてそのまま使うため、簡単なのもポイントです」と、いろんな形で楽しめるアレンジレシピも発信しています。
「おうちで食べるのもおいしいのですが、私は高島とんちゃんのバーベキューが好きなんです。店で好みの部位を選んでもらって、キャンプ場へ持っていくのも最高です。近隣には素敵なアウトドア施設もたくさんありますから、こちらに遊びに来て楽しんでほしいなと思います」。(提中さん)
これからの春シーズン、高島発祥のソウルフードを本場で味わう“滋賀旅”にお出かけしてみてはいかがでしょうか?
有限会社 鳥中
■住所 滋賀県高島市安曇川町西万木9-2
■連絡先 0740-32-0234
■営業時間 10:00~ 19:00
■定休日 1月1日
■ホームページはこちら
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