2024年2月29日(木)公開
初代の山﨑吉右衛門が滋賀県野洲市で糀づくりをはじめたのは天保8年(1837年)頃。以来、180余年にわたって糀づくりを続けています。令和元年(2019年)には建物をリニューアル。販売スペース、味噌やパンづくり教室が行える「はっこう広場」を新設しました。一昨年には、「近江富士テラス」と名付けたオープンスペースも完成。美しい山容を眺めながら飲食や休憩ができるようになりました。
「私は初代からはおそらく7代目に当たると思うのですが史料が残っておらず、記録がある明治時代から数えると4代目になります。創業当時、醤油や味噌を仕込むための糀は生活必需品。一集落に一軒は糀の加工業者がいて、一時期は製造組合も存在したそうですが、父の代の頃から糀製造を専門にする業者が激減。廃業や商売替えされたので、現在も県内で糀を製造しているのはわずかだと聞いています」。(山﨑さん)
糀づくりは、精米した白米を洗って水に浸すことから始まります。その後、蒸して広げ、麹菌をつけて発酵を促します。以前はすべてを手作業で行ってきましたが、発酵食ブームなどを受けて製造量が増えるなかでも安定した品質を保つため、現在は一部を機械化。香りが良く、糖化力にも優れた糀を製造しています。
「糀づくりに使うお米は県内産の日本晴です。米と糀の交換販売も行っていますが、なかには自分で栽培した米で作ってほしいと持ち込まれるケースも月に数回あります。その時は、昭和30年代から使っている釜とせいろで米を蒸し、室で発酵させる昔ながらの製法で糀にして加工賃をいただきます。滋賀は全国有数の米どころ。地元の人々の米や糀に対する思いはとても深いと感じています」。(山﨑さん)
平成18年(2006年)頃から始めたのが味噌づくり教室です。初期の参加者は毎回2~3人程度でしたが、建物のリニューアルに伴って設けた「はっこう広場」は、最大15名の収容が可能。評判が年々高まり、現在は年間120回もの教室を開いています。
「かつては各家庭で当たり前に行われていた味噌づくりの文化を広げたくて、教室を始めました。大豆を蒸すなど、手間のかかる部分は私たちが済ませておき、豆をつぶす、糀や塩を混ぜて味噌玉をつくり、容器に詰めるといった楽しい作業を参加された方たちにしてもらいます。1回に作れる味噌は3.4㎏。各家の消費具合に合わせて定期的に来られる方も増えています」。(山﨑さん)
味噌づくり教室では、すべての工程が終わるタイミングを計らって甘酒がふるまわれます。米糀で仕込む甘酒は上品な甘さで、参加者の頬をほころばせます。
「時々、砂糖を加えているんですかと聞かれますが、糖類は一切加えていません。その甘みこそが米の糖化力で、スイーツづくりにも使えます。飲む時は水で薄めてほんの少しだけ塩を加えるのですが、その効果でさらに甘さが引き立ちます。健康な食に注目が集まっている今だからこそ、砂糖の代わりにもなる糀の魅力をさらに生かす方法をもっと考えたい。それが今後の目標です」。(山﨑さん)
「ここ滋賀」では、3月3日に山﨑さんと奥様の冨美子(ふみこ)さんが「糀屋吉右衛門」の糀商品の販売、甘酒試飲を行います。地元では氏神様のお祭りや法事にも使われる健康食。その自然な甘さをぜひお試しください。
糀屋吉右衛門
■住所 滋賀県野洲市三上1039
■連絡先 077-587-0397
■営業時間 9:00~18:00
■定休日 日曜日
■ホームページはこちら
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