街道を歩くシリーズ1 中山道(なかせんどう)

2023年8月2日(水)公開

 

成立は律令時代とも。

東海道と並ぶメインストリート

 

その昔、都への交通や物流の要所として栄えた街道が滋賀県内には数多く存在しました。今も県内の主要道路であり、その風情や佇まいを残す街道に注目し、ゆったりとめぐる〝滋賀の歴史旅〟をご提案します。今回は「五街道」の一つとして知られる中山道(なかせんどう)をピックアップ。滋賀県土木交通部都市計画課の福井嘉昭(ふくい・よしあき)と安達智明(あだち・ともあき)が街道の成り立ちや見どころについてお話します。後半には、街道周辺の観光スポットもご紹介しています。

 

 

京都と江戸を結ぶ主要ルート

 

滋賀県の主要部を通る東海道と同じく、五街道の一つに数えられる中山道。滋賀県内の総距離は約70キロ。江戸時代には、京都と江戸を結ぶ主要ルートの一つとして利用されてきました。京都から滋賀、岐阜、長野を経て、東京に向かう道筋で、現在のJR東海道本線や東海道新幹線、そして高速道路の中央道のルートに重なる部分が多くあります。まさに日本の大動脈ともいえる街道で、その成立は古代・律令(りつりょう)時代にまで遡ります。

 

県内において、中山道のルートは律令時代から大きく変わっていません。街道が賑わいを見せ始めたのが江戸時代ごろ。参勤交代で宿場などが整備され、みなさんがイメージするような街道の雰囲気になっていきました。実際は東海道の方が江戸へ向かうには距離が短く、当時は東海道を主に利用されていたそうです。しかし、東海道は三重県や愛知県内の大きな川を渡らねばならず、危険であることから、山越えルートである中山道の需要もあったようです。

 

安達智明(右)と福井嘉昭(左)。「滋賀県では、街道のまちなみを守る取り組みの一つとして、地域住民に向けた街道の講義を行うタウンミーティングなどを行っています」(安達)


宿場とその周辺に多くの見どころが

 

かつては街道の休憩場所であり、旅人や各地の大名らをもてなした宿場。中山道には、8つの宿場(東海道と交わる大津宿と草津宿を除く)があり、それぞれに見どころがあります。街道をめぐるならば、宿場を基点とした観光がおすすめです。


滋賀県南西部の守山市にある守山宿は、「京発ち守山泊まり」として、京都から出発した際の第一番目の宿として旅人に知られていた宿場。このほど近くにある「今宿一里塚(いまじゅくいちりつか)」は、「滋賀県指定史跡」の指定を受けています。一里塚は、江戸日本橋からの距離の目安としてつくられたもので、慶長9年(1604年)に江戸幕府が整備したと伝わります。

 

中山道に129カ所ある一里塚のうち、江戸から128番目にあたる今宿一里塚

さらに、県東部に位置する彦根市の高宮(たかみや)宿や鳥居本(とりいもと)宿付近には、観光名所が点在します。街道沿いには松並木が植えられていますが、どうしてこのような並木が作られたのかー。歩いてみると、その理由がわかるかもしれません。


醒井(さめがい)宿もおすすめです。滋賀県北東部の米原市に位置する宿場で、静かで情緒ある街並みが美しい地域にあります。醒井は、街を流れる地蔵川に浮かぶ梅花藻(ばいかも)が有名です。JR米原駅からも近く、関東から新幹線で来られる方にとってもアクセスが良い場所です。

 

醒井宿

他にも街道沿いには、宿場をはじめ、たくさんの観光スポットがあります。江戸時代のまちなみを想像しながら、ぶらりと散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

中山道沿いのおすすめ観光スポット

 

 

①守山宿 中山道街道文化交流館

 

 

江戸時代からある町屋を利用した中山道街道文化交流館。館内では、中山道や守山宿に関する史料などを展示しているほか、喫茶コーナーもあります。
また、交流館から街道沿いを南へ10分ほど歩いた場所には、今宿一里塚が。滋賀県内で唯一残る貴重な遺構です。

 

中山道街道文化交流館
■場所 滋賀県守山市守山1丁目8-14
■問合せ 050-5516-7991(中山道街道文化交流館)
■営業時間 10:00~17:00
■休日 月曜日、祝日の翌日、年末年始
■料金 入館無料

 

 

 

②愛知川(えちがわ)宿 愛知川ふれあい本陣

 

 

大名や役人が宿泊所として利用していた本陣。現在は「愛知川ふれあい本陣」として、カフェなどが揃う総合施設となっています。宿泊も可能で、宿場めぐりの拠点となりそうです。
また、本陣の敷地内には、旧近江銀行愛知川支店をリニューアルした施設も。愛知川宿の歴史や観光情報を発信する場所として活用されています。

 

愛知川ふれあい本陣
■場所 滋賀県愛知郡愛荘町愛知川38-2
■問合せ 0749-42-2165 愛知川ふれあい本陣(中山道愛知川宿街道交流館)
■施設ごとに営業時間・休日が異なるためホームページでご確認を
■料金 入館無料

 

 

 

③高宮宿〜鳥居本宿

 

 

高宮宿の南、葛籠(つづら)町には幕府によって植えられた松並木が現在でもいくつか残っています。この並木は、街道を歩く旅人たちに木陰を提供していたのだそう。
また、近隣には、昭和期に建築家のウィリアム・M・ヴォーリズによって設計された旧豊郷(とよさと)小学校校舎も。現在は複合施設として利用されていて、校舎の見学が可能です。

 

■場所 滋賀県彦根市葛籠町
■問合せ 0749-23-0001(彦根観光協会)

 

 

 

④醒井宿

 

 

街道沿いを流れる地蔵川に浮かぶ梅花藻が名物。7月下旬から8月下旬までが見頃です。水面に小さな白色の花が浮かぶ姿は、この時期ならではの景色です。
そのほか、江戸時代に宿場を通行する大名や役人に対して伝馬、人足の継立などの事務などを行っていた場所である問屋場(といやば)も現存。当時のまま完全な形で残っていることは珍しく、現在は資料館として公開されています。

 

■場所 滋賀県米原市醒井
■問合せ 0749-51-9082(一般社団法人びわ湖の素DMO)

 

 

 

⑤柏原宿

 

 

中山道のなかでも大規模な宿場町だったという柏原宿。滋賀と岐阜の県境の伊吹山で採れる伊吹もぐさは、この宿場の名物。江戸時代後期に刊行された名所地誌「木曾路名所図会」でも紹介されています。かつてはもぐさを扱う店は多くありましたが、現在は一店舗のみに。そのほか、街道沿いには町屋を利用したゲストハウスもあり、新たな魅力を発信しています。

 

■場所 滋賀県米原市柏原
■問合せ 0749-51-9082(一般社団法人びわ湖の素DMO)

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