2022年12月27日(火)公開
滋賀県は、琵琶湖の固有種であるニゴロブナをはじめとする水産資源に恵まれており、琵琶湖周辺の豊かな環境を活かした米づくりも盛んに行われています。
その淡水魚と米を用いて保存食品として生まれたのが、“ふなずし”に代表される発酵食品の“なれずし”です。酒に合う珍味や特産品として知られる“なれずし”ですが、滋賀県のお節料理にとって欠かせない逸品でもあります。
お正月のなれずしとして食べられることが多いふなずし。前年の7~8月ごろに漬け込みが行われます。食べごろを迎えたふなずしをお正月の御馳走にします。滋賀では豊作を祈願するオコナイ行事や春祭りにもなれずしが登場します。
堀越さんは長浜市内老人会の協力を得て平成13年に湖北のお節料理について調査を行いました。
「湖北のお節料理は、黒豆、酢ごぼう、ごまめ、里芋煮物、かまぼこ、数の子などの定番の料理に、ふなずしやえび豆、いさざ煮、しじみ煮など、普段から親しまれている煮物を加える家が約半数あることがわかりました。また、お正月の御馳走として、鯉の筒煮が滋賀県全域で食べられています。」(堀越さん)
名物の赤こんにゃくは、産地である近江八幡市近辺では一年を通して食卓に上がりますが、他地域では主にお正月に楽しみます。白こんにゃくと盛り合わせて紅白にする家庭もあるようです。
「玄米茶やほうじ茶に昆布と梅干を入れ、一年の邪気を祓うために新年に飲む大福茶。滋賀では梅干の表面の水分がなくなるぐらいまで香ばしく焼いて加えます。梅干しの香りが一層豊かになります。」(堀越さん)
「餅は日本のハレ食の主役。蒸してから杵でつくため、ご飯より手間のかかる高級な食べ物として位置づけられてきました。年神様を迎えて五穀豊穣を祈る行事でもあるお正月には、一番に供えます。その餅や子孫繁栄を象徴するサトイモなどのお供えを下げてごった煮を作ったのが雑煮の起源。平安時代に始まり、室町時代には雑煮という言葉自体もすでに存在していたと言われています。」(堀越さん)
堀越さんは、平成8年に県全域の家庭を対象にした餅食調査を実施。雑煮に丸餅を使うと答えたのは、湖西80%、湖南67%、湖北64%、湖東63%の結果になりました。
「滋賀は丸餅が主流であることが明らかになりました。丸は欠けることのない円満さの象徴。ひとつひとつていねいに丸める餅のことを滋賀では“はまぐりさん”と呼びます。やや大きめに作り、雑煮には焼かずに加えます。」(堀越さん)
一方、汁の味付けは地域によって差が見られました。
「京都との往来が盛んな湖西や湖南は白味噌仕立てが中心。中部地域との交流もある湖東は田舎味噌仕立てとすましが混在。すりごまを散らすなど、エリアごとの雑煮文化が存在することもうかがえます。湖北は80%を占める家庭がすまし汁で、昆布で取っただしに鰹節を振りかけるシンプルな雑煮が作られています。」(堀越さん)
「滋賀のお正月で忘れてはならないのは“じゅんじゅん”」と堀越さん。
“じゅんじゅん”は、牛肉や鶏肉、ナマズやウナギ、イサザといった湖魚などをすき焼き風に味付けする鍋料理。具材を煮るときの音が「じゅんじゅん」と聞こえることから、このような料理名になったとか。客を呼ぶお正月はひときわ豪華になります。
「我が家では、正月には親戚間で呼び合って、“近江牛のじゅんじゅん”をするのが恒例で、ネギや豆腐、こんにゃく、セリなどを加えて、大人も子どもも鍋をつつきます」。(堀越さん)
米どころである滋賀では酒造りも盛ん。「“じゅんじゅん”を食べながら日本酒を楽しむのもお正月の楽しみです」と堀越さんは話します。
発酵文化が発達しているため、野菜の漬物も多彩。全国的にも知られているのが日野菜です。葉物を重ねて塩漬けする目にも美しいたたみ漬けなども作り続けられています。
「命の宝庫である琵琶湖を擁する滋賀県の食文化は実に豊かです。特に湖魚を使う料理の美味しさを若い世代の人にも知ってもらいたい。そのために今後もさまざまな活動を続けていきたいと思っています。」(堀越さん)
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