2024年07月29日(月)公開
「人前で話すのは得意ではない」と言いつつも、近江鴨について熱く語る坂上さん。
「琵琶湖源流の郷」とも呼ばれるほど良質な水に恵まれている滋賀県高島市は、冬は寒く、夏は比較的涼しいことでも知られています。その山麓、人里離れた自然豊かで静かなエリアで坂上さんは「近江鴨」を誕生させました。
「アヒルと野生の真鴨の交雑交配種である合鴨は臆病な動物。静かな環境と良い水が欠かせません。その条件を満たす場所を探すのは簡単ではありませんでしたが、高島市の企業誘致指定企業に認定いただき、現在の高島市武曽(むそ)地区とのご縁を得て令和2年(2020年)に近江鴨の産地としてグッドワンを創業させていただくことができました。」(坂上さん)
鴨舎内にはウッドチップが敷かれていて、走り回る合鴨の足元はふかふか。1㎡当たり5羽以下というゆとりある空間で平飼い飼育されている。合鴨は寒さには強いが、暑さには弱いため、快適に過ごせるよう夏季は鴨舎内の室温や飲み水の温度を下げるなどの工夫をしている。
広々とした敷地内に鴨舎や加工場などが点在。親鴨の飼育から、出荷までを一貫して行っている。
坂上さんが「近江鴨」を誕生させようと思ったのは、琵琶湖に飛来する多くの鴨を見たとき。
「滋賀県には近江牛や近江米など素晴らしい食材が多くあるのに、近江鴨ってないなぁ」とふと感じたのだとか。ゼロから立ち上げるからこそできること、新しい畜産へのチャレンジを心に決めた瞬間でした。
「“妥協するくらいなら、つくらない”の信念のもと、一点の曇りもなく、安全で美味しい合鴨肉をつくろうと思いました。そんな夢や想いを同じくする仲間たちが集まったのがグッドワンの始まりです」。(坂上さん)
鴨舎に立ち入る際、坂上さんやスタッフは扉を軽くノックしたり「入るよー」と声を掛けます。これは鴨たちを驚かせないため。アニマルウェルフェアの考えが行き届いた、ストレスのない快適な環境下で抗生剤や成長剤を一切使用せず飼育される合鴨は、近くの沢から水を引き、ナノバブル化した量子水を飲んでいます。お米を主にしたオリジナル飼料には、琵琶湖八珍(*)のひとつでもあるホンモロコ由来の魚粉なども配合。資源の有効活用も心がけています。
(*)琵琶湖八珍とは:琵琶湖の特徴的な魚介類8種で構成。ビワマス、ニゴロブナ、ホンモロコなどがある。
近江鴨を食べた方から届くのは、「合鴨肉の概念が変わった」や「臭みや雑味が全くない」、「脂が甘い!」といった感想。“記憶に残る味”目指して、合鴨は大切に育てられています。「ロース肉はしっとりやわらか、モモ肉には地鶏のような弾力があります。1羽の命をいただくので、内臓やガラなどすべての部位を販売しています」。(坂上さん)
一番大変な脱羽作業は、1羽ずつ丁寧に人の手でピンセットを使って抜いていきます。
ビタミンB2、B12、鉄分などを多く含む合鴨肉。甘いと評判を呼んでいる脂には、身体に良いとされる不飽和脂肪酸が多く含まれている。
現在、近江鴨は滋賀県のみならず、全国の有名飲食店やホテルで使用されています。なかには、産地を見学するために高島市まで足を運ぶ料理人もいるほど。その味と品質を達成するための一つの要因が、親鳥の飼育から販売までを自社で行う一貫生産です。
「同じ敷地内にすべての部門があるので、営業や加工担当者が気付いたことを飼育担当者にすぐ伝えることができます。命をいただくわけですから、受け取ったお客様に感動していただけるよう、コストや手間を惜しむことなく隅々に気を配っています」。(坂上さん)
「現状を疑いチャレンジしていく」という理念のもと、常にブラッシュアップを心がけている「グッドワン」のスタッフ達。熱い思いを託した近江鴨を全国に発信し、地域の雇用を促進するため、今後は飲食店の運営なども企画したいと意気込んでいます。
株式会社 グッドワン
■住所 滋賀県高島市武曽横山字飛惣橋3000番地
■連絡先 0740-20-9024
■営業時間 9:00~17:00
■定休日 土日祝日
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