かるたの聖地「近江神宮」の新春行事

2023年2月8日(水)公開

かるた文化の普及を願って「かるた祭・かるた開きの儀」

 

滋賀県大津市にある近江神宮は、昭和15年(1940年)に、天智天皇を御祭神に創建された神社です。琵琶湖の西岸、比叡山のふもとに位置し、木々に囲まれた静かな境内には年間50万人の参拝客が訪れます。天智天皇が詠まれた和歌が百人一首巻頭の歌であることから、“かるたの聖地”ともいわれ、毎年1月上旬の日曜日に「かるた祭・かるた開きの儀」が行われます。

 

 

百人一首の1首目を詠んだ天智天皇を祀る神社

 

石造りの鳥居の先、長い階段をあがると鮮やかな朱色の楼門が現れます。

近江神宮があるのは、かつて大津宮があったとされる場所。天智6年(667年)に都が飛鳥から遷都された翌年には、この地で天智天皇が即位したと言われています。石造りの鳥居をくぐって参道をすすむと鮮やかな朱色の楼門が見えてきます。この奥には拝殿や本殿があり、「かるた祭・かるた開きの儀」が行われる神楽殿(かぐらでん)はその北側にあります。
6万坪の広大な敷地に、近江造り(昭和造り)と呼ばれる社殿が建つ近江神宮には、国の登録有形文化財も多く、神楽殿もその一つです。

 

「秋の田の 刈穂の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」。天智天皇が詠んだ和歌が刻まれています。

社務所の脇に立つ「天智天皇御製碑」。天智天皇の詠まれたこの和歌が、小倉百人一首の巻頭歌です。このことから、天智天皇は“歌かるたの祖神”とされ、近江神宮では、かるたにまつわる神事やイベントが多く行われています。

 

 

70年余続く「かるた祭・かるた開きの儀」

 

儀式に使われた百人一首の歌かるた。

かるたにまつわる行事のなかでも、毎年1月上旬の日曜日に執り行われる「かるた祭・かるた開きの儀」は、70年以上続く伝統的な儀式。この儀式の前後に競技かるた大会のシーズンは開幕し、数々の競技大会が近江神宮で開催されます。中でも、高校生たちが競技かるたに奮闘する映画『ちはやふる』で取り上げられるなどで「名人位・クイーン位決定戦」はよく知られる大会になりました。

 

読師(どくし)や取姫(とりひめ)は、競技かるたの競技者たちが奉仕しています。

午前9時、厳かな雰囲気のなか、神楽殿に宮司、奉行、読師、取姫により、「かるた祭・かるた開きの儀」が始まります。天智天皇が詠まれた和歌「秋の田の 刈穂の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」が読師により神前で朗誦された後、奉行の合図があり、和歌の読み上げが始まります。華やかな装束に身を包んだ4人の取姫はゆったりとかるたを取ります。現代の競技かるたのスピーディな動きとは違い、宮廷でのかるた遊びを思わせる優雅な所作です。

 

「かるた祭・かるた開きの儀は、かるたの文化をたくさんの方に知っていただき、競技かるたのさらなる繁栄を願って行われています。映画のロケ地になったこともあり、若い方も多くかるたに親しんでいただけるようになりました」と、権禰宜(ごんねぎ)の伊藤範純(のりずみ)さん。

 

境内では、百人一首の歌やかるたの札を目にすることも。

境内には百人一首のかるたの展示のほか、和歌の歌碑も多く建てられています。日本で古くから親しまれてきたかるたに、近江神宮で触れてみてください。

 

 

近江神宮
■場所 滋賀県大津市神宮町1番1号
■問合せ 077-522-3725
ホームページはこちらから

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