甘くてやわらかい、ひこね夢アスパラ

2023年7月14日(金)公開

 

琵琶湖の東に位置する彦根市(ひこねし)と愛荘町(あいしょうちょう)、豊郷町(とよさとちょう)、甲良町(こうらちょう)、多賀町(たがちょう)で構成されるJA東びわこ管内は、犬上川(いぬかみがわ)や愛知川(えちがわ)が流れる自然豊かなエリア。古くから稲作を中心とした農業が盛んですが、様々な野菜や果物も生産されています。
なかでも、近年、人気を呼んでいるのがアスパラガス。「ひこね夢アスパラ」と名付けられ、年間2.5トン程度が出荷されています。その生産者の一人である福原勉(ふくはら・つとむ)さんにアスパラガス栽培にかける思いを伺いました。

 

 

アスパラガス作りを復活させた

義父の想いを継いで

 

18世紀末にオランダから伝わったアスパラガス。福原さんは、直径1~2センチ、長さ30センチほどに育ったものを早朝に収穫している。一般的にアスパラガスは、種から育てた場合、収穫できるまでに3~5年かかると言われている。

愛知川の河口右岸に広がる彦根市稲枝(いなえ)地区のアスパラ生産組合では、1988年からアスパラガス栽培を開始。現在は、3名の生産者が約60アールの面積で生産しています。稲枝産のアスパラガスは太くて甘く、えぐみがほとんどありません。収穫直後は生でも食べられるほどのみずみずしい肉質も特長です。

 

8月末ごろまでは、4カ所あるJA東びわこの直売所で販売されるほか、学校給食でも大人気。滋賀県内や京都市内のホテル、レストランからの注文も多い特産品です。

 

「彦根市の新海町(しんがいちょう)では、戦後まもなくから1960年代にかけてアスパラガスが生産されていて、地元の名物でした。その頃は“土盛り”と呼ばれる、土をかけて遮光することで白いアスパラを育てる方法が主流。主に缶詰加工用として出荷されていました。ところが、海外から安価な缶詰が輸入されるようになり、生産が激減。この辺りではアスパラが作られなくなりました」(福原さん)。

 

1980年代に入り、加工用ではない、生食用のアスパラガスの生産を復活させようとの機運が高まります。先頭に立って栽培を始めたのが福原さんのお義父様でした。

 

「その頃、私はサラリーマンをしていて、手伝ったこともなければ、栽培について聞いたこともありませんでした。亡くなってから、もっといろんな話を聞いておけばよかったと後悔した思いも込めて、10年前から独自に研究してアスパラを栽培しています」(福原さん)。

 

 

春と夏に採れるアスパラガス

その栽培法は大きく異なる

 

アスパラガスを立茎(りっけい)させて収穫する夏芽。土の下では巨大化した根が1メートルほどの深さにまで伸びている。「アスパラの栽培を始めた頃はいろんなことがわからなくて、北海道から九州まで、様々な産地を訪ねて研修をさせてもらいました」(福原さん)。

福原さんはビニールハウス内でアスパラガスを栽培しています。その大きな理由は、気温が低い初春から秋口までの長い期間にわたって栽培できること、水分のコントロールが容易であること。出荷は2月ごろから始まり、気候に恵まれれば10月ごろまで続く年もあります。

 

ただし、2月から5月に採れるアスパラガスは“春芽”。6月から初秋にかけて採れる物は“夏芽”と呼ばれ、その育ち方は驚くほど違います。

 

「簡単に説明すると、収穫が終わった秋から冬にかけて根に蓄えられた栄養を使って生えてくるものを春芽。その春芽を取った後、茎葉を繁茂させて(立茎と呼びます)、今度は光合成の力で育てるものを夏芽と呼びます」(福原さん)。

 

地面からニョキニョキとアスパラガスだけが生えているのが春芽。茎や葉がうっそうと茂る株元にアスパラガスが生えているのが夏芽。ほ場の状態からもその違いは一目瞭然です。

 

 

アスパラガス栽培は難しい

でもその分、夢もある

 

アスパラキャッチャーと呼ばれるハサミで1本ずつ収穫する。

カットされた断面からは水分がボトボト滴るほどみずみずしい。

アスパラガスは多年草。株の経済寿命は約10年と言われていますが、福原さんのほ場では平成元年に植えたアスパラガスも健在。そのほか、あっさりした味わいのオランダ産の品種、料理人からも絶賛されているアメリカ産の品種、苦みのないホワイト系、めずらしいパープル系など、計7品種を育てています。

 

「アスパラには、牛糞や稲わらなどで作る有機肥料を主に与えています。根元に水が付くと病気になりやすいので、立茎を始める頃からは水分を抜きます。土に保水力があるので、1カ月ぐらいは水をやりません」(福原さん)。

 

収穫期が終わった後は、来春に向けての作業がスタート。立茎させたアスパラガスの茎葉を紅葉させ、“黄化”と呼ばれる状態にします。

 

「この作業が春芽の収量や質を左右します。アスパラ栽培は簡単ではありませんが、工夫次第で味も良くなるし、収量も上げられる夢のある作物です。農家のロマンですね」(福原さん)。

 

JA東びわこ営農経済部 稲枝営農経済センター
■住所 滋賀県彦根市本庄町92-1
■連絡先 0749-43-3720
■ホームページはこちら

 

 

【コラム】

美味しいアスパラの選び方

 

「アスパラは、節と節の間がスラっと長いものがよどみなく生長した証拠であるため、繊維質が少なくやわらかい。ハカマと呼ばれる三角形の部分がキレイな形をしているものほど食感が良いとも言われています。穂先が締まっていることもポイント。また、アスパラは鮮度が大事。なるべく早く調理してほしいのですが、冷蔵庫で保存する場合は曲がらないよう立てておくことも忘れずに」(福原さん)。

 

節と節の間が長いこと、ハカマの形の良さが見極めのポイント。


生産者直伝の美味しい食べ方

 

「ひこね夢アスパラはやわらかいので、根元の部分も皮を剥かずに食べられます。オリーブ油で炒める、サッとゆでて和え物にしても美味しくいただけます。手でポキポキと折り、電子レンジで加熱(2本分500W50秒ほど)するだけでもOK。塩やマヨネーズが良く合います。斜め切りして即席漬けの素に漬けておけば、浅漬けも楽しめます」(福原さん)。

 

写真提供・調理/福原ファミリー
左上から、塩茹でアスパラ、ツナと合わせた無限アスパラ、アスパラの豚巻き、アスパラと牛肉炒め、冷凍から揚げのマヨ炒め、アスパラベーコン。
シンプルなものからひと手間加えたものまで、さまざまな料理と相性バッチリ。

 

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