ローカル鉄道で滋賀を満喫!

 

2023年12月19日(火)公開

 

滋賀県にはJRのほか、南西部に京阪電気鉄道(以下、京阪電車)、東部に近江鉄道、南部に信楽高原鐵道と3つのローカル線が走っています。観光や通勤通学の足として利用されてきただけではなく、ローカル鉄道独特の魅力が多くの人を魅了しています。

 

地下鉄➡登山鉄道➡路面電車と3変化を見せる「京阪京津線」

 

びわ湖浜大津駅付近

 

大阪府と京都府、そして滋賀県を結ぶ京阪電車。その一つ、「京津線(けいしんせん)」は、京都市山科区の御陵駅(みささぎ)駅から滋賀県大津市のびわ湖浜大津駅までの7駅、約7.5kmの路線です。

 

京津線の大きな特徴は、その景観の変化にあります。京都市営地下鉄と直通運転をしていて、御陵駅があるのは地下。御陵駅を出発して京阪山科駅の手前で地上へと出て、その後は逢坂山に向かってぐんぐんと登っていき、その後琵琶湖へ向かっては下り坂。その途中にある大谷駅から上栄町駅間の勾配は最大61‰(パーミル)、さながら登山鉄道の趣です。大谷駅のホームそのものが斜面になっていて、設置されているイスは座面が平面になるように脚の長さが左右で異なります。

 

大谷駅のホーム。かなりの傾斜がある

さらに、上栄町駅をびわ湖浜大津駅に向かって出発してしばらくすると、線路は道路の中央に。路面電車のような「併用軌道」の区間です。この併用軌道を走ることができるのは、法律で30m以下の車両と定められていますが、京津線の電車は4両編成で約66mあります。そのため、さまざまな設備や工夫を施し、特別な許可を得て走行しています。

 

びわ湖浜大津駅を出発した電車が坂を上っていく。電車が走る部分は黄色になっている

その一つが道路のカラーリング。電車が走る部分が黄色に塗られていて、軌道と車道が一目で判別できるようになっています。

 

信号の手前にある残時秒表示灯

電車専用の信号「残時秒表示灯」もこの場所ならでは。車両が長いと、電車が交差点を通過している途中で信号が変わってしまう可能性があります。これを防ぐために、信号が黄色に変わる少し前に残時秒表示灯が消灯して、もうすぐ信号が変わることを知らせています。運転士はこれを合図に、電車を停止させます。


滋賀県を走る京阪電車のもう一つは、「石山坂本線」。びわ湖浜大津駅に接続し、琵琶湖沿いを南北に走っています。北は、比叡山延暦寺や日吉大社へアクセスできる坂本比叡山口駅、南は紫式部ゆかりの石山寺の最寄り駅・石山寺駅まで21駅・約14km。沿線には学校が多く、朝晩は通学の学生で賑わっています。

 

 

 

古い駅舎や橋梁など貴重な文化財が残る「近江鉄道」

 

 

近江鉄道は、米原駅から貴生川駅までを走る本線(約47.7㎞)、高宮駅から多賀大社前駅までの多賀線(約2.5㎞)、近江八幡駅と八日市駅を結ぶ八日市線(約9.3㎞)の3路線があります。


近江鉄道は明治29年(1896年)に創業した歴史ある鉄道会社。明治31年(1898年)に彦根駅~愛知川駅間(約12.1km)が開通して以来、徐々に路線を伸張してきました。


現在ある33駅の中でも、古い駅舎が残っているのが東近江市にある新八日市駅と彦根市にある鳥居本駅です。

 

新八日市駅

新八日市駅の駅舎は、薄緑色の板張りの壁と瓦葺の屋根が特徴的な2階建て。大正時代のモダンさを感じさせる和洋折衷の建物です。駅は大正2年(1913年)にでき、駅舎ができたのは大正11年(1922年)だと言われています。

 

鳥居本駅

一方、昭和6年(1931年)に開設された鳥居本駅は、途中で角度が変わっている「腰折れ屋根」を持つ洋風建築。入り口付近に煙突があり、中には半円形の窓が設けられているなど、建築当時のまま残る姿がレトロで撮影スポットとしても人気です。平成25年(2013年)には国の登録有形文化財にも登録されています。

 

愛知川橋梁

また、愛知川駅~五箇荘駅間にある、愛知川にかかる愛知川橋梁も貴重な建造物。真っ赤な鉄橋は、明治後期、明治29年(1898年)にかけられたもの。こちらも平成20年(2008年)に国の登録有形文化財となっています。

 

田んぼの中にある朝日野駅

景色の美しさも近江鉄道の魅力です。近江鉄道スタッフのおすすめは朝日大塚駅~朝日野駅間に広がる田園地帯だそう。また、冬の空気が澄んだ日には、市辺駅〜平田駅間のまっすぐに伸びる線路の先に、琵琶湖の対岸にそびえる比良山が見えることがあるとか。滋賀県の雄大な景色を満喫できる鉄道です。

 

 

 

焼きものの里へ続く「信楽高原鐵道」。途中には参道を横切る線路も。

 

山間を走る電車 (信楽高原鐵道提供)

 

甲賀市にある貴生川駅から信楽駅までの6駅、約14.7㎞の信楽高原鐵道は、高原の急こう配を縫うように走る第三セクター路線。山間ならではの緑豊かな景色を眺めながら、約24分で焼きものの里、信楽駅に到着します。

 

日雲神社の参道を横切る線路

今回紹介した3鉄道のなかでは最も短い路線ですが、ユニークな特徴は多くあります。
まず、雲井駅~勅旨駅間。沿線に日雲神社がありますが、線路は神社の参道を横切ります。車窓からは神社の本殿の前を横切る光景が見られます。

 

大戸川にかかるプレストレスコンクリート造橋梁

その先、勅旨駅~玉桂寺駅間には、日本で最初に築かれた本格的プレストレスコンクリート造橋梁(※)が大戸川にかかっています。昭和29年(1954年)に作られたもので、橋梁のわきにはその標準桁も残されています。令和3年(2021年)には国の重要文化財に指定されました。

(※)プレストレスコンクリート:コンクリートに高強度の鋼材によって圧縮力(プレストレス)を導入した、高い強度と耐久性を導入したコンクリート

 

大きな狸がお出迎え

そして信楽駅で出迎えてくれるのは、信楽のシンボル、焼きものの狸。高さ5mを超える巨大な狸が、訪れる人たちをいつも見守ってくれています。

 

滋賀の多彩な魅力を満喫できるローカル鉄道、いかがでしたか? 車窓に広がる景色を楽しみながら、滋賀をあちこち旅してみてください。

 

 

〇京阪電気鉄道株式会社 大津営業部
 大津市錦織2丁目7番16号  077-522-4521
 ホームページはこちら

 

〇近江鉄道株式会社
 彦根市駅東町15番1  0749-22-3303
 ホームページはこちら

 

〇信楽高原鐵道
 滋賀県甲賀市信楽町長野192番地 0748-82-3391
 ホームページはこちら

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